機械式時計との一体感
機械式時計は、内部構造が見えるつくりになっているものが多くあります。その様々な部品が連動して、1つの時計を動かしている様子は見ていて何とも味わい深く、美しいものではないでしょうか。中でも、手巻き式時計は、自動巻きムーブメントが組み込まれていないため、その内部構造がより見えやすくなっていることが少なくありません。そして、その精密な部品の連なりを、自分自身の手でゼンマイを巻き上げることで動かし始めるという時計との一体感は、機械式時計でなくては体感し得ません。また、手巻き式時計はゼンマイを必ず巻き上げなくてはなりませんが、そのひと手間は、愛用者にとっては面倒であるどころか、日々の習慣となり、ますます愛着を抱かせるものではないでしょうか。
手元から響く緻密な音
機械式時計をつけていると、ふと耳元に手を近づけたときに、時計の音が聞こえることがあります。静かな空間では、耳元でなくても、微かにその音が聞こえてくることもあるはずです。この音は、秒針が動くことのその奥にある、繊細で緻密な部品の営みを感じさせるものではないでしょうか。クオーツ式の時計では、あまり得られない感覚かもしれません。たとえ、つけていることを意識させないほどに腕に馴染んだ時計であっても、また、時計を見ていないときであっても、意図せず持ち主にその存在を感じさせてくれる音は、時計に対する愛おしさをきっと改めて感じさせてくれる瞬間になるはずです。何といっても、その耳に優しく響く音の心地良さは、機械式時計ならではの味わい深さではないでしょうか。